舞台を中心に活躍する俳優の大山真志さん。10歳から子役として活動しており、俳優歴は20年を超えています。ベテランと言われてもおかしくない経歴ながらも、大山さんは、常に真摯に作品と向き合い、何よりも舞台演劇を愛する好青年。さらに、サービス精神の塊で常に観客がどうやったら楽しめるかを考えてくれます。今回は、そんな大山さんの魅力をぎゅっと濃縮してご紹介します!

歌、ダンス、お芝居、何でもござれのマルチプレイヤー

大山さんが初めて舞台に立ったのは、子どもの頃に所属していたアルゴミュージカルの『あんず 〜心の扉をあけて〜』。年1ペースで出演を続け、19歳の時に出演した『ミュージカル テニスの王子様』から本格的に俳優としての活動を始めます。

大山さんは『ファントム』『ALTAR BOYZ』『キス・ミー・ケイト』などミュージカルを中心に出演していますが、ストレートプレイやダンス公演など幅広く出演しています。

ミュージカル作品は歌だけで物語を紡いでいく『レ・ミゼラブル』のようなスタイルも多い中、大山さんはお芝居に重点をおいたミュージカル作品にも多く出演しており、歌・ダンスはもちろん、演技力と表現力が高く評価されています。

大山さんは硬軟様々な役柄を演じられる方。女性のためのショーステージに立つ男たちの人生を描いた『Club SLAZY』では、頑固で孤独なショースター、大学卒業まで“恋をしない”と決めた学生たちを描いたシェイクスピア原作のラブコメディ『ラヴズ レイバーズ ロスト-恋の骨折り損-』では、バーのメイドに恋するちょっとおバカな青年と全く正反対の役を演じています。2019年に出演した『イヴ・サンローラン』では、常にコミカルで陽気なクリスチャン・ディオール役とイヴ・サンローランを生涯愛し、パートナーとして支え続けたピエール・ベルジェ役の2役を好演しました。

キャラクターが“存在している”と思わせてくれる表現力

大山さんのお芝居は、演じているというよりもそこにキャラクターが“存在している”、“生きている”と思わせてくれます。筆者がそれを強く感じたのは初めて大山さんを拝見した『晦日明治座納め・る祭』です。

大山さんが演じたのは、主役の1人、阿弖流為。阿弖流為は奈良時代の「蝦夷(えみし)」(現在の東北あたり)の長とされていますが、あまり文献の残っていない人物。それゆえ、キャラクター設定は「大飯食らいの優しい大男」と非常にオリジナリティにあふれています。

阿弖流為は大山さんが演じており、劇中で笑ったり、泣いたりするのはもちろん“お芝居”なのですが、見ている方にはそれが本当に楽しくて笑っているように見えるし、悲しみに突き落とされて号泣しているように見えるのです。そしてつられるように観客は笑みを浮かべ、涙を流すのです。筆者は今まで様々な俳優さんを見てきましたが、ここまでお芝居で心を動かされたのは初めてでした。

そして、表現力はお芝居だけではなく歌声にも現れています。重厚感がありながらも伸びやかな歌声は、演じているキャラクターによって全く違う色をしており、嬉しい時は本当に嬉しそうに、悲しみや絶望にくれている時は声を聞いているだけで本当に胸がしめつけられます。

今度はどんな顔を見せてくれるのかが楽しみになる俳優

2020年には『JERSEY BOYS IN Concert』に出演し、帝国劇場に立つという大山さんの幼い頃からの目標を果たしました。ただ、同作は元々『JERSEY BOYS』本編の上演を予定していたところを新型コロナウイルス感染拡大の影響で、急遽コンサート形式に切り替えての上演だったので、2022年秋に上演予定の『JERSEY BOYS』への出演を期待したいところです。

どんな役柄でも真摯に向き合い、また自身も1ファンとして舞台演劇を心から愛している大山さんが次に出演するのは『五番目のサリー』。彩吹真央さん、中河内雅貴さんや井澤勇貴さん、駒田一さんなど様々なジャンルの俳優さんたちの中で今度はどんな姿を見せてくれるのか楽しみにしたいです。