パトリス・ルコント監督の名作映画『髪結いの亭主』が日本で初の舞台化を果たします。舞台を1950年代の茨城県に移し、安田章大さん、中村映里子さん、丸山智己さん、占部房子さん、村木仁さんなどが出演予定です。脚本・演出を務める石黒麻衣さんの特徴である「茨城弁」を全編に取り入れ、小さな理容室で織りなされる愛の歓びと儚さを鮮烈に立ち上げます。
男の純粋で偏愛的な恋心を描いた傑作映画
本作の原作である映画『髪結いの亭主』(1990年公開)は、パトリス・ルコント監督の代表作です。フランス映画界最高峰の映画賞である第16回セザール賞において、作品賞、監督賞、主演男優賞など計7部門にノミネート。翌年に日本で公開されると、ミニシアター文化の最盛期と重なり、細やかな感情の表現や映像の洗練された美しさが、多くの映画ファンを魅了しました。
主人公のアントワーヌは、少年時代から「髪結いの女性と結婚すること」に憧れ続けています。大人になって理容師のマチルドと出会うと、念願の結婚生活を叶えました。平穏な日常の中、愛することの歓びと儚さを、ユーモアと官能性を交えながら詩的に表現し、恋愛映画の枠を超えた普遍的な愛の物語として世界中で高く評価されています。
そんな不朽の名作が公開から30年以上を経て、日本で初めて舞台化されることが決まりました!上演に向けて、パトリス・ルコント監督は次のようにコメントしました。
「30年以上前、この映画を制作しようと考えたとき、これは非常に私的で内面的な作品になるとわかっていました。心の奥底では、この物語に誰も興味を持ってくれないのではないかと不安でした。というのも、ごく単純で、かつ儚いラブストーリーだからです。
ところが、映画が公開されるとそれなりの成功を収めました。私は安堵し、嬉しく思いました。
しかし、何よりも私を幸せにしてくれたのは、この映画が多くの国で配給され、国際的な成功を収めたことです。その中には日本も含まれていました。当時、私は新作映画の撮影中で、映画『髪結いの亭主』の日本公開に同行できませんでした。しかし、この映画が放つ輝く感情が、日本の皆様の心に触れることはわかっていました。心より愛してやまない日本の皆様に深く感謝申し上げます。
脚本の執筆中、私は舞台化することを一切考えていませんでした。ひとつの場、理容室という特別な場所、登場人物も少ないというお芝居にはうってつけの条件であるにもかかわらずです。フランスでは、何度か舞台化の試みが検討されましたが、どれも実現には至りませんでした。
今日、『髪結いの亭主』が日本で新たな命を吹き込まれることを知り、私はこの上ない喜びに満たされています。なぜなら、私が表現したかったことを最も深く理解し、共感してくださったのは日本の皆様でした。
私は、この舞台が成功を収めることを確信しております。そして映画の感動がもう一度もたらされ、分かち合われることになるでしょう。」
有閑階級の男が、戦後の茨城県の小さな理容室で孤独と欲望に揺れ動く
舞台『髪結いの亭主』は原作映画を大胆にアレンジし、舞台を1950年代の茨城県にある小さな理容室に移して描かれます。
復興に向けた活気に満ち、人々が慌ただしく行き交う時代。主人公の男は何不自由なく育ったものの、社会の抑圧や厭世観を抱えていました。しかし、理容師として自立し、人生を切り拓いている女性と出会うことで自由を見出していきます。
脚本・演出を手がけるのは、第33回読売演劇大賞優秀演出家賞を受賞した新進気鋭の劇作家・演出家、石黒麻衣さんです。2025年に上演された劇団普通の『秘密』『季節』で高い評価を受け、現代演劇界で注目を集めています。さらに『季節』は第70回岸田國士戯曲賞の最終候補作品としても選出されました。
石黒さんの主宰する「劇団普通」は、家族や友人などの身近な人間関係をテーマに、何気ないやり取りに潜む人間の本質を緊張あふれる作風で立ち上げます。近年は、彼女の出身地である茨城県の方言を取り入れ、茨城弁ならではのリズムや響きを生かした「全編方言芝居」でも話題です。
戦後の茨城県の小さな理容室で、茨城弁を織り交ぜながら、激情を内に秘めた男女の愛と官能の物語が紡がれます。これはささやかな退廃なのか、それともささやかな自由なのか。理容室という小さな楽園に憧れ、孤独と欲望の狭間で揺れ動く男は、いったいどこへ向かうのでしょうか?
【あらすじ】
裕福な家庭に育ちながら働かず、世間から距離を置いて生きる男は、身分違いとされた理容師の女と結婚する。しかし、その結婚を機に父は亡くなり、家族との関係も疎遠になっていく。慎ましく静かな女との日々は、理容室を訪れる客たちとのささやかな交流によって少しずつ揺らいでいき・・・。
安田章大×中村映里子が「幸福で退屈な結婚生活」を詩情豊かに立ち上げる
主演を務めるのは安田章大さん(SUPER EIGHT)。演者として舞台に立つだけでなく、観客としても数多くの演劇に触れてきたそうです。作品への深い理解に裏打ちされた感性と表現力を強みに、『閃光ばなし』『あのよこのよ』『アリババ』『愛の乞食』『音楽劇 ポルノスター』といった数々の舞台で活躍してきました。
ステージに立つ安田さんからは「観客と対峙することが楽しい」という喜びがあふれています。自分が何かを表現することで、目の前の人が刺激を受け取り、もしかしたら人生が変わるかもしれない。生身の人間による創作活動ならではのワクワクを、彼は舞台芸術に感じ、大切にしているのではないでしょうか。『髪結いの亭主』を1950年代の茨城県に存在させるという難易度の高い作品さえも、安田さんはきっと楽しんで乗りこなしてくれるはずです。
理容師の女性を中村映里子さんが演じます。普段は映像作品を中心に活動しており、映画『月の犬』『廃用身』『恒星の向こう側』、ドラマ『軍師官兵衛』『アンメット ある脳外科医の日記』『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』などに出演しました。舞台は2014年の『生きてるものはいないのか』以来、12年ぶりとなります。
さらに丸山智己さん、占部房子さん、村木仁さん、用松亮さん、浅井浩介さん、武谷公雄さん、中山求一郎さん、香月彩里さんが出演予定です。実力派俳優陣が集結し、繊細かつ鮮烈な人間模様を、「内包された言葉にし難いもの」も含めて贈ります。
PARCO PRODUCE 2026『髪結いの亭主』は、2026年9月28日(月)〜10月25日(日)に新国立劇場 小劇場で上演されます。11月5日(木)・6日(金)に広島・JMSアステールプラザ 大ホール、11月12日(木)〜11月20日(金)に大阪・森ノ宮ピロティホールでも公演予定です。詳細はこちらから。
石黒麻衣さんの脚本・演出と安田章大さんの初タッグを、傑作映画の日本版で見られるなんて、一石三鳥ですね......!読売演劇大賞優秀演出家賞を受賞して注目を集める石黒さんの演出と、数々の舞台で圧倒的な存在感を放つ安田さんの表現力がどう化学反応を起こすのか。全編茨城弁で紡がれる詩的で濃密な愛の物語を、劇場で体感できる日が待ち遠しいです!



















