世界中で圧倒的な人気を誇る伝説的漫画「北斗の拳」を初めてミュージカル化し、2021年冬、大きな話題を呼んだ『フィスト・オブ・ノーススター~北斗の拳~』。豪華新キャストも加わり再演が決定しました。ファンから「アタタミュ」の愛称で親しまれる本作の制作発表の様子をお届けします。

ファンから愛されるミュージカル『フィスト・オブ・ノーススター~北斗の拳~』

漫画「北斗の拳」は、週刊少年ジャンプに1983年〜1988年まで、原作・武論尊さん、漫画・原哲夫さんにより連載された作品です。最終戦争により文明社会が失われ、暴力が支配する世界となった世紀末を舞台に、北斗神拳の伝承者・ケンシロウが、愛と哀しみを背負い救世主として成長していく姿が描かれています。「北斗の拳」オフィシャルウェブサイトはこちら

フランク・ワイルドホーンさんによるダイナミックな音楽に乗せ、石丸さち子さん、高橋亜子さんがタッグを組んだ緻密な構成演出によって、新感覚のエンターテインメント作品に昇華されたミュージカル『フィスト・オブ・ノーススター~北斗の拳~』。

制作発表で、ホリプロの堀社長や演出を務める石丸さんが「お客さんに育てられたミュージカル」と話していたように、「アタタミュ」という愛称はファンがTwitterで感想をつぶやくために作ったハッシュタグ。ミュージカル誌の『2021年ミュージカル・ベストテン』で総合第4位にランクイン、オリジナルミュージカルでは第1位に輝くなど、観客から愛されている作品です。

本作は、中国の演劇制作会社ランスペースと共同プロデュースした作品でもあります。ランスペースは東野圭吾原作のオリジナルミュージカル『白夜行』を中国国内で大ヒットさせ、一昨年にはフランク・ワイルドホーン作曲の新作ミュージカル『人間失格』を上海で上演した、中国のミュージカル界を牽引する会社。本作では数々の日中共同制作を成功させてきた演出家ヤン・アンさんと、中国の身体能力の優れた6名のダンサーを迎えています。
また、本作では、日中国交正常化50周年を記念し、国際交流基金の支援を受けて上海公演を予定していましたが、新型コロナウイルスの影響で断念することとなりました。中国では、映像配信を行う予定です。

壮大な愛の物語

二千年の歴史を誇る北斗神拳の修行に励んでいたケンシロウ、トキ、ラオウの三兄弟。南斗の里から来たユリア、そのお付きのトウとともに成長していく三兄弟の中から、北斗神拳の師父・リュウケンは末弟のケンシロウを次の伝承者に選びます。そんな時、世界を覆う核戦争によって文明社会は崩壊し、人々は弱肉強食の時代を生きることに。ケンシロウがユリアとの愛を育み、共に生きていこうとした日、南斗のシンにユリアを奪われ、胸に七つの傷を刻まれてしまうのでした…。絶望の中、放浪の旅に出たケンシロウは、たどり着いた村で出会った二人の孤児・バットとリンと共に旅を続けます。

一方ラオウは世紀末覇者・拳王を名乗り、世界を恐怖で支配しようとしていました。ケンシロウは女戦士・マミヤが治める村の用心棒・レイと共に、ラオウによって囚われたトキを救出。しかし、その後ユリアがシンの城から身を投げたことをラオウから知らされます。ケンシロウは愛すべき仲間や強敵たちの哀しみを胸に、救世主として立ち上がります。

新キャスト・新演出で、世界を目指しさらにバージョンアップ

制作発表では、全12曲とボリューミーで大迫力の特別メドレーが発表されました。

写真:山本春花

アンサンブル16名による力強い「抗いようもなく(リプリーズ)」から始まり、今年から新たに加わったキャスト・レイ役の三浦涼介さんとマミヤ役の清水美依紗さんが「抗いようもなく」を披露。

写真:山本春花
写真:山本春花

ノリノリで会場を沸かせたのは、ジュウザ役の伊礼彼方さん、上川一哉さんによる「ヴィーナスの森」。

写真:山本春花
写真:山本春花

そして、ユリア役の平原綾香さんとMay’nさんは「氷と炎」を披露。2人ともユリアの衣装を想起させるような白のロングドレスで登場しました。メドレーの最後はケンシロウの「心の叫び」。大貫大輔さんが北斗百裂拳と回し蹴りを披露しました。

写真:山本春花
写真:山本春花

歌唱後の会見には、大貫勇輔さん、平原綾香さん、May’nさん、小西遼生さん、伊礼彼方さん、上川一哉さん、植原卓也さん、上田堪大さん、清水美依紗さん、福井晶一さん、永井大さんが登壇されました。

オリジナルミュージカルを世界に向けて発信するため、再演にあたり、新キャストを迎え、新演出がつき、バージョンアップしているという稽古場。作品は、よりシンプルに、そしてよりダイナミックにブラッシュアップを遂げたと言います。

例えば、伊礼彼方さん・上川一哉さん演じるジュウザは、前回よりほんの少しシーンに台詞が増えているだけで、ずっと彼の人生の深さがわかるように変更があったと言います。ラオウとトキの最後の戦いも前回よりグッとブラッシュアップ。

大きく変化したのはレイで、演出の石丸さんによると、1シーン新しく加わったそう。救世主として自覚しているケンシロウと、同じく愛するものを失って人生を見失っているような人生を生きてきたレイ。そのレイとケンシロウが出会うことで、より深々とこの苦しい時代を生きる男たちの生き様のようなものがより深く描けるのではないかということでシーンが追加に。前回レイを演じていた伊礼さんは、追加シーンの良さに「どうしてあのシーンをやらせてくれなかったのか!」と話していました。

そして、1幕ラストのケンシロウの、救世主として覚悟を決めるシーンにも変更が。なんと、大貫勇輔さん自身が振り付けをして表現することに。そして、その振り付けに合わせて音楽も新しく用意されました。石丸さんはそのシーンを見て、「大貫さんが長い時間培ってきた身体と、演じてきたケンシロウの役への理解、そして今この時代(コロナ禍)でリーダーになる責任をどう背負っていくかという決意が、振り付けの中に全て入っている」と言います。

たくさんの変化が詰まっているため、初演を観て楽しんだ方も、再演で初めて観る方も、皆さん楽しめる作品になっています。大貫勇輔さんは、「地獄のようなこの時代に一体何ができるんだ」と言うケンシロウの言葉を例に出し、自分がケンシロウを演じること、そして、この時代にこの作品をやる責任をしっかりと全うしなくてはと話しました。

平原綾香さんは、「1番辛い時に、自分の命をかけて臨んだ作品だった」と初演時を振り返りました。平原さん演じるユリアは、初めから完成されている女性。見守り、常に待ち続けているキャラクター。常に何かに打ち勝ち、成長していくケンシロウを見て、「できればケンシロウをやりたかった」と漏らすと、すかさず大貫さんに「どうぞ!」と突っ込まれていました。

写真:山本春花

再演の今回から参加するキャストは、稽古場の熱量の凄まじさに、口を揃えて「圧倒された」と話していました。初ミュージカルとなるのが、マミヤ役の清水美依紗さん。「(マミヤは)自分とは別の強い女性で、役作りをすることも初めてなので、沢山壁にぶつかっている」と稽古場で奮闘している様子。

ラオウ役の永井大さんもミュージカルへの出演は初めてと言います。歌稽古の日に限って腹痛になっていたという永井さんでしたが、ケンシロウとして構えて引っ張っていってくれる大貫さんが導いてくれているそう。

大貫さんを初め、初演から続投している方々が作品に対して熱い想いや愛を持って引っ張っていき、全員が同じ目標に向かって熱量を持って稽古している様子が伺えました。

写真:山本春花

ミュージカル『フィスト・オブ・ノーススター~北斗の拳~』は、9月25日(日)〜30日(金)まで 東京・Bunkamuraオーチャードホールで上演。その後、10月7日(金)〜10日(月)には 福岡・キャナルシティ劇場で上演予定です。公式HPはこちら

ミワ

制作発表のための特別メドレーは、全12曲で、約25分。その時間だけでも、ミュージカル版の「北斗の拳」の世界を凄く感じられる時間でした。演出の石丸さんのエネルギー溢れるお話を聞いて、新しくなった演出や、新キャストの融合がとても楽しみになりました。