鴻上尚史さん作、かつて井上芳雄さんも王子役を演じたミュージカル『シンデレラストーリー』。演出をウォーリー木下さんが務め、なんと作詞は斉藤由貴さん!豪華布陣が織りなすのは、リアルでコミカルなシンデレラの物語です。(2022年9月・日本青年館ホール)※ネタバレあり

新しいアプローチで『シンデレラ』をコミカルにアップデート!

近年、童話を現代の価値観に合うようアップデートされた作品が多数発表されています。『シンデレラ』もその1つ。王子様との結婚を夢見る女性から、ドレスデザイナーを夢見る女性に生まれ変わったAmazon Originalの『シンデレラ』は記憶に新しいところです。

しかし、本作『シンデレラストーリー』は、童話の大筋はそのままに、“家事ばかりしていたシンデレラがどうしてダンスを踊れたのか?”“魔法使いはなぜシンデレラを助けたのか?”といった疑問に答えていくという新しい視点で描かれた作品。

せっかく助けてくれようとしている魔法使いに、「誰ですか?帰って!からかわないで」と押し返すシンデレラは新鮮。シンデレラを助けようと奮闘するネズミたちも、「ディズニー版では俺たちがドレスを作るんだけど、そんなのネズミには無理」と現実的です。今や少しファンタジーすぎる『シンデレラ』に、コミカルさとリアルさを加えるという、新しいアプローチ。ミュージカルあるあるをコミカルに扱うシーンもあり、ミュージカル初心者でも楽しめる作品となっています。

ハッピー、ラッキー、ラブ、スマイル、ピース、ドリーム!

シンデレラを助ける魔法使いを演じるのは、今回が初舞台出演となるアン ミカさん。これが何ともハマり役なのです!!自分を愛して、自分を信じていれば、輝く未来は必ず訪れる。魔法使いのメッセージは、アン ミカさん自身の人間性と重なり、大きな説得力を持ちます。さらに、魔法の言葉「ビビディ・バビディ・ブー」もアン ミカさん仕様に。“魔法使いはなぜシンデレラを助けたのか?”の回答もとても素敵。

マジカルな雰囲気を醸し出したかと思えば、「どうして助けてくれるの?」と現実的なシンデレラには関西弁でツッコミ。コミカルなシーンもアン ミカさん流に盛り上げます。現実とファンタジーが曖昧な世界観だからこそ、魔法使いの言葉がスッと胸に染み込んできて、力強い歌声に涙がほろりと流れていきました。

色鮮やかな衣装とポップなダンスも楽しい!

さらに本作の魅力の1つが、カワイイが詰まった衣装!カラフルで、見ているだけで元気をもらえる衣装たちが目でも楽しませてくれます。義母役・佐藤アツヒロさんの美しい姿は必見です!

映像演出も多様に活用しており、少し説明的すぎると感じる箇所もありつつも、魔法の表現として取り入れているのは見事でした。ダンスもポップでキュート。手拍子で観客が参加できる場面も多く、自ずと笑顔になれる作品。意外に悲劇の名作が多いミュージカル作品の中で、とびきりハッピー度の高いかつ質の高い作品に出会えたことに、嬉しさを感じました。

ミュージカル『シンデレラストーリー』は9月24日から愛知公演を上演予定。その後福岡・大阪公演も予定されています。チケットの詳細は公式HPから。

Yurika

シンデレラ役の水嶋凜さんはなんと初舞台とのこと!声に抑揚が乗りやすく、セリフが聞き取りやすい上に感情が伝わってくるため、どんどん惹き込まれていきました。歌に伸びやかさがもう少し欲しいところではありましたが、今後の活躍に期待です。