モーツァルトの三代名作オペラ『フィガロの結婚』『ドン・ジョバンニ』『コジ・ファン・トゥッテ』の台本作家であるダ・ポンテ。モーツァルトの影に隠れた1人の詩人、“世界で一番、不幸で、幸運な詩人”を描いた新作音楽劇が、6月に幕を開けます。初演を前に、本作に出演する海宝直人さん、平間壮一さん、相葉裕樹さん、井上小百合さんが歌唱披露イベントに登場。約250名の観客の前で5曲の楽曲を披露しました。

各キャラクターを象徴する、オリジナル楽曲を披露!

6月21日にプレビュー公演、7月9日から東京公演が始まる新作音楽劇『ダ・ポンテ〜モーツァルトの影に隠れたもう一人の天才〜』。脚本は、ドラマ『凪のお暇』『妻、小学生になる』などを手がけた大島里美さん。演出は、劇団四季オリジナルミュージカル『バケモノの子』でも話題となった青木豪さん。音楽は劇団四季『恋に落ちたシェイクスピア』、音楽劇『星の王子さま』などで青木さんとタッグを組んできた笠松泰洋さんです。

歌唱披露イベントでまず披露されたのは、ロレンツォ・ダ・ポンテ役を務める海宝直人さんによる「この静かな夜に」。本作のテーマ曲であり、モーツァルトと口論になったダ・ポンテがガストハウスを去り、深夜のウィーンの街で歌うナンバーです。ダ・ポンテの孤独を象徴するようなしっとりとした楽曲を、海宝さんが一言一言、丁寧に歌い紡いでいきます。

撮影:山本春花

続いてヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト役の平間壮一さんが登場、「僕が拍手するんだ」を披露。紆余曲折を経て、もう成功や名声は追い求めないと歌う楽曲です。数々の賞賛を受けてきたモーツァルトだからこそ、思いのままに音楽を奏でたいという純粋な思いが伝わってきます。

撮影:山本春花

宮廷楽長であるアントニオ・サリエリ役の相葉裕樹さんは「ヴィヴァ、イタリア!」を歌唱。祖国のイタリアを讃えるオペラを書くようにダ・ポンテに指南する楽曲で、伝統を重んじるサリエリの人物像を象徴するように、高らかに歌い上げます。

撮影:山本春花

ダ・ポンテや様々な男性を翻弄するオペラ歌手・フェラレーゼ役の井上小百合さんは「街角の女の子」を披露。時代に翻弄されながらも強く儚く生きる女性像が垣間見えました。

撮影:山本春花

最後に、海宝さん平間さんによるデュエット「最高の相棒」が披露されました。本楽曲は、ダ・ポンテとモーツァルトが初めて共作した『フィガロの結婚』が大成功を収めたのちに歌われるナンバー。分かり合えるパートナーに出会えた喜び、求めていた成功を得られた達成感、未来への希望を楽しく歌っており、本作での大きな見どころとなりそうな楽曲です。

撮影:山本春花

海宝ダ・ポンテは 「“騙されてもいいや”と思えてしまうくらいチャーミングで魅力的」

イベントの後半ではトークコーナーが行われ、本作の見どころや、日本初演ミュージカルを創り上げることへの思いが語られました。海宝直人さんは、自身が演じる実在の人物ダ・ポンテについて、オファーを受けて初めて知ったそう。ダ・ポンテは「波瀾万丈で、ドラマチックで、必死に生きた姿が可笑しさもある人生だなと感じました。今年になるまで演劇で描かれてこなかったのが不思議だなと思ったくらい」と魅力を語ります。

撮影:山本春花

女好きで詐欺師とも言われたダ・ポンテという人物について、井上さんは「調べていくと、とにかく“クソ野郎で、なんだこのクズは…”と思ったんです(笑)。それを海宝さんが演じるなんてどうなるんだろう?と疑問に思っていました。でも海宝さんの演じるダ・ポンテを見ると、“騙されてもいいや”と思えてしまうくらいチャーミングで魅力的なんです。人柄が役に投影されていて、このカンパニー、この配役でしか出来ない作品になっていっているのは、完全オリジナルで作っているからこそ」と語ります。

ダ・ポンテとは対照的に、これまで数々の作品で描かれてきたモーツァルト。“天才で破天荒”という描かれ方が多かったモーツァルトですが、平間壮一さんは「台本を初めて読んだ後の印象は、普通の青年だなと。優しさや温かさ、丸みを帯びている印象でした。自分らしく作って良いのかなと思っています。優しいモーツァルトを作っていきたい」と語り、新たなモーツァルト像を見ることができそうです。

革新的なオペラを作ろうと奮闘したダ・ポンテとモーツァルトとは対照的に、伝統を重んじるサリエリを演じる相葉裕樹さん。しかし悪役、ダークな印象ではなく、「愚直で音楽に真っ直ぐな印象の方が強い」と語ります。

平間さん、海宝さんも「ヴィヴァ!だもんね」「イタリア大好きですもんね」と、相葉さんが歌唱した楽曲「ヴィヴァ、イタリア!」にかけて茶目っ気たっぷりにコメント。「この曲やると2人がニヤニヤしているんですよ。なに高らかに歌ってるんだみたいな」と相葉さんも話すように、悪役というよりもチャーミングな役どころのようです。

撮影:山本春花

ソプラノ歌手フェラレーゼ役を務める井上小百合さんは、強い女性を演じるにあたって、普段の井上さんとは正反対のイメージとなるため歌唱もとても緊張したそう。「こうやって生きるしかないの!」という強い思いを込められるよう意識していると語りました。

作品の見どころを聞かれると、またもや平間さん海宝さんが“ヴィヴァ”の振付をし、相葉さんが「そこじゃないでしょ」とツッコミ。楽しい場面も多い作品ながら、海宝さんが「ドラマチックな人生を描いているのでドラマチックなシーンも多い」と語る通り、平間さんは稽古場で海宝さんのシーンを見ていて、思わず涙を流したシーンがあったそうです。

楽曲は30曲以上!バラードやデュエット、モーツァルトの名曲をモチーフにした楽曲もあり、多彩な音楽も魅力の1つ。井上さんは「母国のオペラを作ろうと奮闘したモーツァルトとダ・ポンテの物語は、今まで描かれてこなかった人物を描き、日本の新作音楽劇を作る私たちとリンクすると感じています。そんな瞬間を皆さんにぜひ目撃していただきたい」と熱い思いを語りました。

撮影:山本春花

平間さんは「人間というものは欲張りで、わがままで、自分をどう出していいのか迷ったり、意気投合できる人に出会ってもその先どうなるかは分からなかったり。そういった人間模様がメインテーマとなっていて、(演出の)青木豪さんもアンサンブル1人1人の動きまで細かく見ているので、色々な人間を見てもらえると楽しんでもらえるかなと思います」と本作の魅力を語りました。

座長となる海宝さんは「エンターテイメントとして楽しんで頂きながら、“生きるっていいな”という希望を持って帰っていただけるような作品になるんじゃないかという予感で稽古をしております」と期待を語りました。

音楽劇『ダ・ポンテ〜モーツァルトの影に隠れたもう一人の天才〜』6月21日(水)よりシアター1010、7月9日(日)より東京建物 Brillia HALL にて開幕。チケットの詳細は公式HPをご確認ください。

チケットぴあ
Yurika

トーク中もフォトセッション中も「ヴィヴァ!」と盛り上がる皆さんの姿から、温かな雰囲気のカンパニーであることが伝わってきました。